モントリオールの壁

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初めに書いておきますが、文化も習慣も異なる場所での不慣れさだとか、フランス語ができないとなかなか職にありつけないとか、そういう意味の壁ではありません。

モントリオールに生活の拠点を移してもう1年。まだまだ新米である事に変わりは無いものの大抵の事には慣れたつもりです。それでもどうにも堪え難いのが「音」に関する問題。

少々話が飛びます。ある時YouTubeを観ていたら、オーストリアのウイーンに暮らす日本人オペラ歌手の方が紹介されていました。その方のお住まいは随分古くからある建物で壁がとても厚く作られていて、どれだけ声を張り上げて歌の練習をしても近所迷惑にならずに助かるのだそうです。

とても羨ましかったです。

モントリオールの街並は確かに美しく、ただの散歩ですら贅沢に思えるようなエリアも数多くあります。私が住んでいる場所も決して悪くないですし、元々そんな景色の中に住みたくて今の家を借りました。

そして一戸建てに住んでいるのでもない限り、モントリオールだろうと東京だろうと、ある程度の音漏れがあるのは仕方の無い事。以前住んでいた香港でも同じで、もちろんたまには「マンションでトレッドミルなんか使うなよ」と思ったりしましたが。

それにしてもここのはかなりひどいです。上から左から右から、とにかくよく音が漏れて来ます。それが洗濯機や掃除機の音なら、まあお互い様ですから何か言えたものではないのですが、壁のすぐ向こう側で時間を問わずにあんな声を上げるのはやめてもらいたいのです。完全に筒抜けです。朝早い時間であったり、昼過ぎであったり、普通に夜であったり、それも2日おきぐらいにあって防ぎようもありません。

単に彼等自身の羞恥心が欠けているのか、それともこちらではごく当たり前なのかはよく分かりません。ただ言えるのは、あの声こそ私がカナダに移民して来てからの1年とちょっとで最も苦痛に感じている事です。

こんな時、同じ大家さんが管理される物件であれば相談の余地もあるかも知れませんが、あいにくお隣さんは別の大家さんが所有しているので直接先方に出向く以外の方法はありません。しかしそれをどう伝えればいいのでしょうか。友人に相談したところ丁寧な手書きのメッセージを残すといいとは言われたものの、結局問題なのはその内容で、こちらが言わんとする事をどうオブラートに包むようにして伝えるのか、どうしてもそこで頭を悩ます事となり、最終的には我慢を続けようとの決断に至りました。よくよく考えれば、単純に文化の違いで片付けられる問題ではない気もしますし(確かに海外では短絡的にそのように物事を考えがちではありますが)、何でも伝えればいい、伝えたもの勝ちだとは思いません。どうにも超えられない「壁」だってあるのです。

幸い契約は今年の6月末なので、これを機に別の場所に引っ越す事も決めました。少なくとも外観からすれば建物の構造などどこも似たり寄ったりですので(実際に身の回りでも多かれ少なかれ音漏れで悩んでいる知り合いは居るようです)、次の場所でも同じ状況に陥る可能性が無いとは言えません。それでも角部屋や最上階を選ぶ事で全方位から音が来るのだけは避けたりですとか、もう少し考えて部屋探しをしなくてはいけなさそうです。

全く、ウイーンの壁が羨ましいです。

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